ABS学術対策チームよりお知らせ 4/1

ABSチームより

1.各国情報の「キューバ」、「中国」を更新しました。
キューバ
中国
2. お陰様でこの名古屋議定書学術関係者MLも登録者数が1511名となりました。
皆様の周りに新規登録をご希望の方がいらっしゃいましたら、下記からご登録いただくようご紹介ください。
解除は、タイトルに【登録解除】と書いて、abs@nig.ac.jpにご連絡ください。
【ジュネーブ再開会合の報告】
ジュネーブ再開会合 Resumed sessions of SBSTTA-24, SBI-3 and WG2020-3
2022年3月14日〜28日 スイス連邦共和国 ジュネーブ

1.概要

 生物多様性条約会議において、愛知目標の次の10年計画、ポスト2020生物多様性枠組について議論されている。

同時にDNAの塩基配列を一例とするデジタル配列情報(DSI)を生物多様性条約および名古屋議定書の利益配分の対象と

するかどうか、どのようなシステムを作成するかなどが議論されている。

 今回の再開会合において、全体会議にて、アフリカグループからは、DSIの課題解決がなければ、次期枠組みを

採択しないこと。具体的にはすべての生物多様性関連製品の小売価格の1%を徴収するシステムを求めている。

日本を含むアジア太平洋グループからは、以前としてDSIの概念が不明確であり共通理解の不足を指摘、

学術や企業などを含む建設的な対話を提案している。EUはCOP15までの明確なロードマップ、

関係者による話し合いの場を提案。日本は、多基準分析の使用に関する 疑問。多数の締約国が、

利益配分アレンジメントにおいて伝統 的知識の保護を優先させることを支持している。

 全体としては、1%の具体的な金銭的配分を強く主張し、先住民族と地域住民の伝統的知識の

保護を強く主張するアフリカ勢、議論が未成熟であり関係者による話し合いが必要と主張する先進国。

トレーサビリティーに強く主張する南米勢という図式となった。

全体会合後、二回のコンタクトグループの話し合い後、3回、議長関係者会議(Friend of co-leads)が開催され、

共同ファシリテーターとしてUKとマラウェイにより議論が加速された。その後の第三回コンタクトグループを経て、

全体会議で勧告案(L3)として決定された。

仮訳:dropbox transfer https://www.dropbox.com/t/h4IEIcF3wYV3KNsl

作成されたCOP15に向けた勧告案は、テキスト本文はクリーン(決定を示す)となり、アネックスおよび附属書は

未決定をしめすブラケット(かっこ【】)が多数存在する。

今後、COP15(今年末、昆明)に向けて第4回ワーキンググループ会議(OEWG4)が6/21-26 ナイロビで開催予定。

https://www.cbd.int/doc/c/2e85/fa06/394129156eb84a2e5be2a74f/wg2020-03-crp-03-en.pdf

2. テキスト内のDSIの解決策となる提案

(a) 効率的で、実現可能で、実用的であること。

(b) 金銭的、非金銭的なものを含め、コストよりも多くの利益を生み出すこと。

(c) 効果的であること。

(d) 遺伝資源に関するデジタル配列情報の提供者と利用者に確実性と法的明確性を提供する。

(e) 研究・イノベーションを妨げない。

(f) データへのオープンアクセスに整合していること。

(g) 国際的な法的義務と相容れないものでないこと。

(h) 他のアクセス権および利益配分手段を相互に支援すること。

(i) 遺伝資源に関連する伝統的知識に関するものを含め、先住民および地域社会の権利を考慮すること。

3. 主な論点

・商業所得の小売価格の1%のメカニズムについて

・デジタル配列情報の範囲、高分子や派生物に関する情報との関係

・DSIと遺伝資源のトレーサビリティー

・金銭的と非金銭的のキーポイントについての合意

関連情報
・(The Guardian)昆明への道:ジュネーブで開催された国連会議でのバイオパイラシー問題で、 自然保護に関する国際的的な取り決めが危ぶまれている。

https://www.theguardian.com/environment/2022/mar/30/cop15-faces-copenhagen-moment-genetic-data-dispute-aoe?fbclid=IwAR04gYcodkozYmaTJ5SrJJbS4_if-m63uYpV_iIR8h8khOhEOlFAmdc3bE4

生物多様性に基づく創薬やその他の商業製品に対して対価を支払うよう途上国が要求しており、自然破壊を食い止めるための国際協定が膠着状態に陥っている。

今週終了したジュネーブでの自然に関するパリ協定交渉では、デジタル形式の遺伝情報(デジタル配列情報(DSI))の利用が明確な対立点として浮上し、アフリカ諸国は次のように主張した。

 

生物多様性のデジタルデータによる発見を補償する金銭的なメカニズムが含まれていなければなりません

アフリカを代表して発言したナミビアの交渉官Pierre du Plessisは、DSIに関する合意がなければ、合意全体の採 択を認めない

ライプニッツ研究所DSMZの研究者で、DSIの第一人者であるアンバー・ハートマン・ショルツ博士は、中国で合意されるものは、世界中の科学研究のための自由でオープンなアクセスを維持しつつ、シンプルでなければならないと述べた。現在、DSIは日本、ヨーロッパ、アメリカの3つの主要なデータベースで管理されている「DSIから得られる利益を共有することは正しいが、お役所仕事で科学を麻痺させることは正しくない」とハートマン・ショルツは言う。「我々は、これを正しく理解しなければならない。

グリーンピース中国の政策顧問である李朔は、DSIは「CBDの政党間の最も深いイデオロギーの相違のいくつか」を強調したと述べている。

「科学的にも法的にも複雑な問題で、金融と密接に関係している。ジュネーブでの進展は限定的で、昆明にはすでに取り除くべき爆弾が多すぎる。DSIは、慎重に管理しなければ、連鎖的に爆発する最も厄介な問題の一つであることは確かだ」と述べた。

 

・(論文)Nature地球上の生物多様性を保護する野心的な計画が資金難に:https://www.nature.com/articles/d41586-022-00916-8
Van Havre氏は、交渉の明るい話題として、デジタル配列情報(DSI)の利益を公正かつ公平に分配する方法についての議論が土壇場で「大きな一歩」を踏み出したことを挙げている。DSIは、植物や動物などの生物から収集された遺伝子データから構成されている。
スイスのグランドにある国際自然保護連合のトーマス・ブルックス主任研究員は、DSIの話し合いは実際には難航していると言う。遺伝物質が収集される生物多様性の豊かな地域のコミュニティは、そこから得られるデータの商業化をほとんど制御できず、金銭的な利益などを回収する手段もない、と彼は説明する。・(EU委員会)2022年3月30日シンケヴィシウス委員によるOECD閣僚級環境政策委員会(EPOC)での第2回スピーチ , オンライン
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/SPEECH_22_2195
「3つ目のポイントは、遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分をめぐる未解決の問題に対して、建設的な解決策が必要だということです。これは特に、デジタル形式の遺伝情報の利用が拡大しているデジタル配列情報(Digital Sequence Information)に当てはまります。」