- 佐々木あすか
- SASAKI ASUKA
- [ 人文社会科学部 芸術史研究室 助教 ]
作品から知る美術の歴史
今回は「仏像の表現」に関わる研究です。
みなさんは、仏像を見たことがありますか?過去に見た仏像は、どのような形をしていたか覚えているでしょうか。複数の仏像を見たことがある場合、思い浮かべた仏像は、髪型、着衣など、それぞれ違う特徴を持っていると思います。
仏像の中に、様々な造形のものがあるのはなぜでしょうか。それは、仏像が作られた時代や作る人によって、表現が異なるからです。
リアルな仏像
弘前大学の佐々木あすか先生は、運慶の仏像に着目して研究を行っています。研究のきっかけは、大学二年生の時に実習で奈良県を訪ね、運慶が作った円成寺大日如来像を実際に見たことでした。
運慶は、平安時代末期から鎌倉時代にかけて活躍した仏師です。仏師とは、仏像を作る職人のことを指します。運慶が仏像作りを教わったのは、同じく仏師であった父の康慶でした。
師弟関係にあった康慶と運慶ですが、同じ仏像の作り方をするわけではありません。特に運慶の作る仏像には、身体の膨らみなどにリアリティがあり、人間らしさを意識して彫られているという特徴があります。
仏像を研究する方法
では、仏像についての研究はどのような手順で行われるのでしょうか。まず、仏像の図版や写真などの資料を集めるところから始まります。しかし、写真だけでは、撮影できていない角度や立体的な表現が読み取れないことがあります。そのため、展覧会などに足を運んだり、お寺へ調査に行ったりするなど、実際の仏像を間近に見ることも重要な研究手法の一つです。様々な手法によって集めた情報をもとに、仏像の作者や制作年代を考えたり、時代による仏像表現の変化を捉えたりします。
佐々木先生は、現在、青森県を中心とした北東北の仏像について、都の仏像との影響関係を探ろうと試みています。
弘前大学では、美術作品に関係した講義として「美術史実習」を担当しています。実習では、実際に自分の目で美術作品を観察し、客観的な言葉を用いて作品の特徴を説明する練習などを行っています。
最後に、佐々木先生からのメッセージ
数多くの仏像を比較し研究することで、共通点や相違点を抽出したり、作者独自の表現を見つけたりすることができます。そして、歴史の流れとリンクさせて考えた時に、作者の人生を知ることができるところに研究の面白さがあります。
芸術史研究室では、仏像以外にも絵画、工芸などの日本美術作品を取り扱います。所属する学生はそれぞれお気に入りの作者や作品があり、研究をしています。
現在好きな作品がない方も、弘前大学に入り学びながら見つけてみませんか。好きな作品がある方は、その魅力を本研究室で探求してみませんか。
美術史実習の授業風景
陸奥新報社 2024年(令和6年)4月22日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部4年 和田 桜佳
イラスト:弘前大学大学院地域共創科学研究科 赤沼 しおり
担当 :弘前大学研究・イノベーション推進機構