- 大里絢子
- OSATO AYAKO
- [ 医学部 心理支援科学科 准教授 ]
[ 保健学研究科 総合リハビリテーション科学領域 ]
得意不得意を知り、応援しあう
今回は「発達障害の支援」についての研究です。
みなさんは「発達障害」という言葉を知っていますか?
発達障害は、生まれ持って脳の仕組みに違いがあり、得意不得意の差が大きく生活等に支障が出る脳機能の障害のことです。具体的には、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如多動性障害(ADHD)等があります。
弘前大学の大里絢子先生は、発達障害に関する研究チームの一員として、精神科医や作業療法士とともに調査や研究を行っています。
発達障害を知る
大里先生が病院で受診した患者さんと関わっていたとき、発達障害の特性を持つ子がその特性を理解されなかったり、過剰に叱責されたりして自信を失くし、学校に行く気力をなくしたりしているケースがありました。その様子を見た大里先生は、発達障害の特性に合った関わり方や環境調整の重要性を色々な人に知ってほしいと思いました。
その後、弘前市で2013年に5歳児発達健診が始まり、これをきっかけに大里先生は発達障害の研究を始めました。
健診では、アンケートや知能検査等から、発達障害の診断や支援を行っています。大里先生は、検査内容の考案等で、立ち上げ時から関わっています。
この健診では、研究の同意が得られた、毎年約千人の5歳児のデータが蓄積されます。10年分の膨大なデータは、発達障害の特徴や傾向を分析するために活用されています。
発達障害を支援する「ここあぽ」
発達障害は早期に発見することで、周囲の大人が子どもの発達を促す関わりができるほか、保護者が発達障害についての理解をより深めることができます。そのため、国からは早期発見が求められていますが、特性が困っている状態かの判断が難しく、診断できる専門家も少ないため、早期に的確な発見が難しい状況でした。
このような課題を解決するために作成された支援ツールが「ここあぽ」です。
「ここあぽ」は、5歳児の保護者と保育士へのアンケートから発達の様子を可視化し、発達障害のリスクを判定するウェブシステムです。このシステムの作成にも、5歳児発達健診のデータが使われています。
知っているという優しさ
弘前大学の研究成果で、5歳におけるASDの有病率は約3%であることが示されています。100人に3人いると考えると、発達障害は誰にとっても身近な存在です。
「発達障害」について知ることはもちろん、発達障害の診断を受けている身近な「その人」がどのような個性を持っているのかを知ろうとすることも大切です。
どんな人にも得意不得意があることを理解しているだけでも、見え方や行動が変化し、誰かの過ごしやすさに繋がることがあるのです。
最後に、大里先生からのメッセージ
発達障害に関する研究チームでは、心理支援科学科で学ぶ、人のこころにまつわる様々な理論や、こころの問題に対する感受性、悩める人に寄り添う姿勢を基盤とし、蓄積したデータを元に発達障害を持つ方への適切な環境調整や関わり方を考えたり、発達障害の診断を受けた方やその親御さんの心理面に着目したサポート方法を探求したりしています。
発達障害・発達特性について、まだ知られていないこと、理解されていないことを一緒に調査したり探索したりして、特性がある人もない人も、ともに過ごしやすくなる方法を見つけてみませんか。
弘前大学と青森県で監修し、大里先生も携わったガイドブック
陸奥新報社 2024年(令和6年)2月12日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部3年 和田 桜佳
イラスト:弘前大学教育学部 ひつじ玲汰
担当 :弘前大学研究・イノベーション推進機構