- 梶田展人
- KAJITA HIROTO
- [ 大学院理工学研究科 地球環境防災学科 助教 ]
過去の地球環境の復元
今回は「過去の地球環境の復元」についての研究です。
みなさんは、自分が生まれるまでの地球がどのような環境だったか知っていますか?
近年、地球温暖化が加速していると感じる機会が多いと思います。今年よりも暑い夏が来たらどうしようと不安に思っている人もいるかもしれません。
将来の地球がどうなるかを予測するためには、過去の地球環境変動を知る必要があります。
地球の過去を知る方法
では、過去の地球環境は一体どのように調べるのでしょうか?
例えば、過去の海水温を知りたい場合には、海の底にある堆積物から調べる方法があります。一方で、私たちが生活している陸域の温度について知りたいと思っても、海と同じ方法は使えません。雨などの影響で昔の堆積物がなくなってしまうからです。
そこで、弘前大学の梶田展人先生は、湖の堆積物から地球環境を復元する研究を始めました。
堆積物から温度が分かる?
梶田先生は、一部の限られた湖沼から見つかるアルケノンという特徴的な有機化合物に注目しています。アルケノンは、ハプト藻という植物プランクトンによって合成され、その構造式に含まれる二重結合の数とハプト藻の生息温度が比例するという特徴があります。つまり、堆積物に含まれるアルケノンを分析することで、過去の温度が分かるということです。
アルケノンは世界中の海から見つかるのに対し、湖から検出されることは、ほとんどありません。しかし、日本のいくつかの湖で海とは異なった特性を持つアルケノンが発見されています。そのため現在は、湖にはどのようなハプト藻がいるのかといった基礎となる情報を集め、アルケノンから過去の湖水温が復元できるか試みています。
湖での調査風景
タイムマシンに乗って地球の歴史を紐解こう
梶田先生は、青森県鷹架沼と秋田県一ノ目潟に生息しているハプト藻やアルケノンについて研究しています。
また、昨年から今年にかけては、南極地域観測隊として南極大陸の湖で調査を行いました。
未知の生物を調べることで過去の地球環境が少しずつ明らかになり、過去の地球の様子は、私たちを待ち受ける未来の地球を予測するヒントとなります。
地球科学は、生態系の変化や温暖化の進行などの理解に貢献できる、魅力的な研究分野です。
最後に、梶田先生からのメッセージ
地学の授業を行っている高校は少ないですが、地球科学は総合的な学問なので、化学・生物・物理・数学のどれかに興味があれば、地球科学も好きになるポテンシャルがあります。
まず、地球46億年の環境変動について知り、地球科学への興味を深めてほしいです。私の研究室では、野外調査と化学分析をベースにした地球環境変動の研究を行っています。興味のある方は、ぜひ一緒にフィールドに行って研究しましょう。
陸奥新報社 2023年(令和5年)12月4日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部3年 和田 桜佳
イラスト:弘前大学教育学部 ひつじ玲汰
担当 :弘前大学研究・イノベーション推進機構