- 藤田有紀
- FUJITA YUKI
- [ 医学研究科 整形外科学講座 助教 ]
医学でアスリートを支える
今回は「女性アスリート」に関わる研究です。
みなさんは日々部活動に励む中で、疲労骨折になってしまった、ケガをしてしまった、という経験はありますか?
疲労骨折って?
疲労骨折は、小さな力が骨の同じ部位に繰り返し加わることにより、骨にヒビが入ったり、ヒビが進み完全骨折に至る状態のことを指します。
疲労骨折は部位によって治りやすさが異なり、早期に診断し適切な治療を行うことにより、完全骨折のリスクを減らし、スポーツへの復帰が早くなる可能性があります。また、スポーツへの復帰や再発予防には原因の改善が重要です。
実は、疲労骨折と女性アスリートには密接な関係性があります。
弘前大学の藤田有紀先生は女性アスリートに関する研究をしています。自分自身もスポーツをしたり、観戦したりすることが好きで、スポーツに関わりたいと思っていました。強い選手であってもケガをすると長く競技から離脱しないといけないため、そうならないでほしい、選手であっても健康を害してはならないとの想いから研究を始めました。
女性アスリートの三主徴
競技生活や将来の生活に影響を及ぼすと問題視されている「女性アスリートの三主徴(FAT)」と呼ばれるものは、運動によるエネルギー消費量に対して、食事によるエネルギー摂取量が不足した状態である「利用可能エネルギー不足」をもとに、「無月経」、骨が弱くなる「骨粗しょう症」の3つが生じることを指します。なかでも女子の陸上長距離選手は、その競技特性からFATをきたしやすいと言われています。
実際に、この三主徴のうち、一つでも当てはまれば疲労骨折のリスクは2.4~4.9倍、全てに当てはまると疲労骨折のリスクは6.8倍になるのです。
たとえ、無月経や骨粗しょう症の症状がなくても、利用可能エネルギーが不足している時点で疲労骨折のリスクは上がっているのです。
藤田先生は、アスリートの身体の状態のチェックや血液検査などをもとに、ケガの予防や早期発見に役立つような情報がないかを調べています。
選手のより身近な場所から
藤田先生は、アスリートの競技人生と生涯の健康を考え、かつ良い成績を出せるように、選手の練習量をただ増やすだけではなく、コンディショニングをしたり、ケガの予防などを選手と一緒に考えたりしています。
現在は、弘前大学医学部附属病院に開設された「女性アスリート外来」の診療や、大学女子駅伝チームのチームドクターもしています。
最後に、藤田先生からのメッセージ
一生懸命頑張っているアスリートをサポートできるとてもやりがいのある仕事です。アスリートと共に考え、さらにその選手にとって良い成績を出して喜んでくれると、とても嬉しくなります。
ぜひ、私と一緒に陸上選手だけではなく、幅広い競技を対象に、選手のサポートをしてみませんか?
女性アスリートの三主徴
陸奥新報社 2023年(令和5年)10月30日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部社会経営課程地域行動コース4年 木村 愛華
イラスト:弘前大学教育学部 ひつじ玲汰
担当 :弘前大学研究・イノベーション推進機構