- 本田明弘
- HONDA AKIHIRO
- [ 地域戦略研究所 風力・海洋エネルギー研究室 教授 ]
[ 大学院地域共創科学研究科 ]
青森にいま、風が吹いている
これから風力発電がホットなエネルギー源になる時代に!
探究心旺盛な中高生の皆さんに向けて、弘前大学の先生たちのユニークな研究を紹介するこの連載。今回は「風力発電」について。そう、あの白くて巨大な風車がいま、大変注目を集めているんです。
一昨年、日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。この目標を達成するには温室効果ガスの排出を大幅に減らす必要があるため、再生可能エネルギーの利用割合を高めなければなりません。そこで、これから国を挙げて取り組もうとしているのが、海に風車を設置する洋上風力発電です。
洋上の理由は、陸上ほど設置場所が限定されず、広域で大規模に展開できること。しかも海は陸より風が強いのも好条件。そして日本は海に囲まれているため、風車の設置可能な海域の総面積でいえば、世界屈指の発電ポテンシャルを秘めています。順調にいけば、資源の少ない日本を力強く支えるエネルギー源となりえることから大きな期待がかかっているのです。
青森県の風力発電量はすでに日本一!洋上でも先進地になれる?
そんな計画が進むなか、青森県は洋上風力発電の先進地になれる可能性が高いと教えてくれるのは、本学で風の研究をしている本田明弘先生。実は青森県は全国的にみて最も風が強いエリアで、現状ですでに風力発電量日本一なんだとか。それは冬、大陸から津軽海峡を通って太平洋に吹き抜ける季節風のおかげ。この自然条件は今後、洋上で発電するときも、まさに「追い風」となるはずです。
ただし、洋上で風が強い北海道や青森の沿岸は先行利用者の漁業者が多い地域でもあり、お互いに共存できる環境にすることがとても大切、とも教えてくれました。エネルギー開発も地域と一緒に進める時代なんですね。
そのうえで、いずれ事業が本格化すれば、拠点港で風車の組み立てが行われたり、メンテナンスで雇用が生まれたりして、地域振興にもプラスになるとのこと。青森の新しい未来、楽しみです。
最後に、本田先生からのメッセージ。
「風には、まだまだいろんな可能性があります。本学でも大型の風力発電だけでなく、地域の課題解決のための小規模な風の活用にも取り組んでいて、ナマコ養殖場での送風システムや漁港での揚水システムの実証実験などの実現例があります。2050年は、ちょうど皆さんが社会の中心世代となる頃。そのときには風をより広く使いこなせているように一緒に考えていきましょう。また、風をテーマに毎年各地で開かれる『グローバルウィンドデイ』というイベントもぜひチェックしてみてください。なかなか面白いですよ!」。
陸奥新報社 2022年(令和4年)1月10日 掲載(PDF)