- 佐藤光輝
- SATO MITSUTERU
- [ 教育学部 美術教育講座(デザイン) 准教授 ]
[ 大学院地域共創科学研究科 ]
紀元前までさかのぼるカメラの原理
探究心旺盛な中高生の皆さんに向けて、弘前大学の先生たちのユニークな研究を紹介するこの連載。今回のテーマは「写真術」です。
スマートフォンやデジタルカメラが普及した今、皆さんにとって写真はごく身近な存在ですよね。でも、「カメラって、いつ頃誕生したの?そもそも、写真ってなぜ撮れるの?」と、フシギに思ったことはありませんか?
小さな穴を通った光が、暗い部屋の壁に外の景色を逆さまに映し出す「小穴投影現象」。この現象は紀元前から知られており、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが文献に記しています。実はカメラの原理は、この現象を応用したものです。十五~十六世紀には、ヨーロッパの画家たちの間でこの現象を利用した装置を使って絵を描くことが流行。レオナルド・ダ・ヴィンチも作品を残しています。十九世紀になると光を感じて記録できる感光剤が発見されます。それによって、長年人々が渇望した夢の技術・写真撮影が可能になったのです。
古くて新しい写真術を学ぼう!
本学の佐藤光輝先生は、デザインの授業で写真術を取り上げ、カメラの歴史と技術をたどることで、人間と映像の関係について研究しています。
題材に選んでいるのは、カメラの原点ともいえる針穴写真(ピンホールカメラ)と、青写真(サイアノタイプ)。針穴写真は、小さな穴から光を集めて写す原始的な撮影技法です。この技法は、走る車など動いているものは写りませんが、写し出される景色が淡く幻想的な雰囲気に仕上がるのが特徴。空き箱や缶などを利用しカメラを作る工程も楽しめます。
一方、カメラを用いない青写真は日光写真とも呼ばれ、紫外線によって鉄塩が青く変わる化学反応を利用した技法です。どちらもシンプルな仕組みですがそれだけに奥が深く、古くて新しい表現法としてアーティストからも注目を集めています。
最後に、佐藤先生からのメッセージ。
「人間が肉眼で眺める映像は、機械のように1000分の1秒でとらえることはできません。針穴写真は、人間が美しいなと心を動かしながら数秒間に眺める映像のように、時間をかけて写していきます。アナログ技術(カメラ制作、撮影、現像)と、デジタル技術(画像補正、プリント)のハイブリットシステムによって、オリジナルな表現ができるのも魅力。写真を学術的に研究したり芸術作品を制作したい方は、一緒に学んでみませんか」。
陸奥新報社 2021年(令和3年)9月5日 掲載(PDF)