- 上谷英史
- KAMITANI HIDEHUMI
- [ 大学院保健学研究科総合リハビリテーション科学領域 講師 ]
[ 医学部 保健学科作業療法学専攻 ]
利き手をケガした時でも、ラーメンを箸で食べるには?
探究心旺盛な中高生の皆さんに向けて、弘前大学の先生たちのユニークな研究を紹介する連載の第三回は「利き手じゃない手での箸の持ち方」の研究です。
では早速、ひとつ質問。あなたがもし、利き手をケガして使えなくなった時に、ラーメンを食べたい!と思ったらどうしますか?利き手じゃない手で箸を扱うのはかなりハードルが高いですよね…。
こんな悩ましい状況が、リハビリの現場では実際にあります。骨折や、脳卒中のように麻痺の出る病気などで利き手が使えない患者さんが、もう一方の手を使って箸で食べたいと希望するケースです。ところが現状、作業療法士の持ち方を真似してもらったりはしますが、明確な指導法がないためうまくいかず、途中であきらめてしまう人もいるのです。
そこで本学の上谷英史先生の研究チームは、しっかりと根拠のある数値を使った指導法を開発しようと検証実験を行いました。例えば、それぞれの指を箸の何センチの所にあてればいいのかといった具体的な数値です。それがわかれば指導も明確に、かつ効率的になると考えたのです。
このコツで、箸使いがうまくなるかも?
実験は、利き手じゃない手での箸使いがうまい人とうまくない人の手の動きを三次元動作解析装置などを使って比較分析します。その結果、ベストな指のポジションがわかるとともに、親指の先端位置が箸先方向に近いと、操作能力が低下することが判明しました。つまり、コツとしては親指が箸先方向に向かないよう気をつけるだけでも、箸使いがうまくなる可能性がある、ということです。一週間ほどで結構上達することもわかっているので、気になる方はどうぞ試してみて下さい。
ちなみに、利き手じゃない手でできることを増やすために、今後は文字の書き方なども解明していくとのこと。楽しみですね!
最後に、上谷先生からのメッセージ。
「作業療法において、患者さんは食事や着替えなど日常の様々な動作を練習します。そこで大事なのは、患者さんの意欲。よし、これならがんばってみようと思えるような成果の見通しを示すことが必要なのです。そのため私たちの研究チームでは、多方面から解析し、練習に使う具体的な指標を導き出すことを目指しています。人の動作には、わからないことがまだたくさんあるので、興味のある方はぜひ一緒に解明していきましょう」。
陸奥新報社 2021年(令和3年)8月2日 掲載(PDF)