- 横山仁
- YOKOYAMA HITOSHI
- [ 農学生命科学部 分子生命科学科 准教授 ]
両生類の再生メカニズム
今回は「両生類の再生メカニズム」についての研究です。
みなさんは、両生類が優れた再生能力を持っていることを知っていますか?両生類は、切断された手足さえ、元通りに再生することが出来ます。
では、ヒトと同じ脊椎動物でありながら、なぜそのようなことが可能なのでしょうか。
弘前大学の横山仁先生は、そんな両生類の再生メカニズムついて研究をしています。
優れた再生能力の謎
わたしたち人間を含めて、生物には再生能力がありますが、その程度は種ごとに異なります。そして、その中でも高い再生能力を有しているのが、両生類なのです。
代表的なのが、イモリなどの有尾両生類による四肢の再生です。その再生の過程では、「再生芽」という細胞集団が働いています。手足が傷つくと、そこに再生芽の細胞が集まり、一ヶ月ほどで新たな手足を形作っていきます。
しかし、なぜ両生類だけが再生芽を用いた再生が出来るのかは、未だに明らかになっていません。研究に必要な情報や技術も、近年ようやく揃い始めたばかりです。そのため、両生類の再生メカニズムの解明には、まだ多くの時間がかかるかもしれません。
研究成果の医療での活用を夢見て
両生類の再生現象は様々ですが、横山先生は「オタマジャクシとカエルの再生能力の差」に注目して、研究を行っています。
カエル(無尾両生類)では、幼生から成体になるにつれて再生能力が下がります。例えばオタマジャクシの時は四肢の再生が可能ですが、カエルになるとそれが出来なくなるのです。横山先生は、その点に着目して実験を行いました。その結果、オタマジャクシでは再生の鍵となる遺伝子が活性化する一方、カエルではその活性化が起こらないことが実証されました。
また、この他に横山先生は、「皮膚の再生」についても研究をしています。そして最終的には、両生類のように、傷跡を残さない皮膚再生の仕組みを明らかにすることを目標としています。
これらの研究による成果は、ヒトの治療への応用が期待されています。両生類のような再生能力をヒトの身体にも付与できれば、傷跡を残さない治療法などの確立が可能になるはずです。
最後に、横山先生からのメッセージ
現在の教育現場では、再生現象について学ぶ機会が少なく、興味を持つ学生も減っていると思います。そのため、まずは何かをきっかけに、両生類のように高い再生能力を持つ生き物がいることを知って欲しいです。
また研究においては、生物学に関する幅広い分野を学ぶ必要があります。それらの知識があるからこそ新しい発見が出来ますし、そこが研究の楽しさでもあります。
両生類の再生能力の謎はまだ解かれていませんが、謎を解く道具は揃ってきています。皆さんも、謎の解明に向けて一緒に取り組んでみませんか。
「両生類の手足の再生」
陸奥新報社 2024年(令和6年)10月7日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部4年 鹿内 日愛
イラスト:弘前大学大学院地域共創科学研究科 赤沼 しおり
担当 :弘前大学研究・イノベーション推進機構