- 丹羽康貴
- NIWA YASUTAKA
- [ 医学研究科 病態薬理学講座 准教授 ]
「ねむた」を科学する
今回は「眠気」についての研究です。
今、みなさんはどれくらい「眠い」と感じていますか。全く眠気を感じていない人もいれば、今すぐにでも眠りたいという人もいると思います。
自分以外の人がどれくらい「眠い」と感じているか分かりますか?では、目を閉じて、授業中の教室をイメージしてください。居眠りをしていたり、今にも寝そうな人がいたりすると思います。目を閉じているあなたも、周りからは「眠そう」「寝ている」と判断されるかもしれません。しかし、実際に誰が最も眠気を感じているかは見分けがつきません。
睡眠に関する研究が進んでいる一方で、眠気を感じた時に脳や身体の中で何が起こっているのかはまだ明らかになっていません。
狸寝入りも見抜ける脳波
約百年前に脳波が発見され、睡眠時には睡眠時特有の脳波が出ることが分かり、睡眠状態と覚醒状態を正確に分けられるようになりました。それでも「眠い」状態はまだ眠っているわけではないため、定義しにくいという問題があります。
眠気を共通の物差しで測るためには、何らかの形で数値化する必要があります。そこで、分子や細胞レベルで客観的に眠気を定義することを試みているのが、弘前大学の丹羽康貴先生です。
眠気の研究
丹羽先生は、睡眠の中でも特に「眠気」に着目して研究を行っています。
研究では脳波や筋電図を用い、マウス実験により仮説を検証します。これまで、夢と関係の深い睡眠であるレム睡眠の脳波が検出されないマウスや、通常と比べて覚醒時間が長いマウスなどを用いて研究を行ってきました。現在は、頭を働かせた時に眠気が発生することが多いという気付きをもとに、「記憶」と「眠気」の関係を探っています。
誰もが眠るからこそ
睡眠や眠気は、誰にとっても身近なテーマです。人生の多くの時間を睡眠に費やすからこそ、睡眠を研究することに大きな意義があります。また、自身の睡眠から生まれた疑問が新たな研究に繋がることもあります。
睡眠や眠気に関してはまだ分かっていない部分が多く、「こうすれば眠くならない」「この場面で眠くなるはずがない」などと決めつけられることはほとんどありません。最近では、睡眠不足が積み重なることで心身に影響を及ぼす「睡眠負債」も話題になっています。丹羽先生は、睡眠や眠気に関する悩みを解決するべく、分からないことを一つ一つ確かめながら日々研究に取り組んでいます。
最後に、丹羽先生からのメッセージ
睡眠や眠気の問題についての本格的な研究はまだ始まったばかりだと言えます。自分の気になる現象に疑問を持ち、その裏にある仕組みを考え続けてください。将来オリジナルな研究をするための良いトレーニングになると思います。どこかでお会いできるのを楽しみにしています。
研究写真「元気な時(左)と「ねむた」そうな時(右)の白文鳥」
陸奥新報社 2024年(令和6年)7月29日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部4年 和田 桜佳
イラスト:弘前大学大学院地域共創科学研究科 赤沼 しおり
担当 :弘前大学研究・イノベーション推進機構