- 三上美咲
- MIKAMI MISAKI
- [ 保健学研究科 総合リハビリテーション科学領域 助教 ]
共に考え不器用克服
今回は、「子どもの不器用さの原因と効果的な支援方法」についての研究です。
「走るのが苦手」「手先が不器用」といった運動の困難をもつ子どもは多くいます。こうした不器用さは、日常生活や学習面に影響を及ぼすことに加え、自信の低下や友人関係への影響といった二次的な困りごとにつながることもあります。
弘前大学の三上美咲先生は、弘前市の5歳児発達健診に参加し、子どもの不器用さの原因を明らかにするとともに、効果的な支援方法について研究しています。5歳児健診は就学前の重要な時期に行われ、子どもの日常の様子を把握するスクリーニングと、専門家によるアセスメントによって構成されています(今年度まで)。この取り組みによって、子どもの発達を多面的に理解することが可能になっています。
「できない」を変える工夫―不器用さとの付き合い方
研究の背景には、三上先生の作業療法士としての経験があります。先生は保育園や学校での支援を通して、不器用さによって生じる日常生活や活動の困難を目の当たりにしてきました。研究は「そのような子どもたちの力になりたい」との思いから始まりました。
作業療法などのリハビリテーションでは、その人の能力そのものを高めることと並行して、環境や方法を工夫することで「できるようにする」という視点も重要視されます。
例えば、多様な遊びを通して運動の基礎となる力を伸ばす、課題を細かく分析して達成するための戦略を一緒に考え練習するといった支援が行われます。また、課題の難易度を調整したり、使いやすい道具や目印を使うなどして、活動や生活がしやすいように環境を工夫する支援も行います。このように、多様な支援を通して、不器用さとうまく付きあっていく方法を見つけていきます。
複雑な困りごとに向き合う難しさ
子どもの不器用さは脳のさまざまな働きに関わります。1人の子どもが複数の発達障害を併せ持つことも多く、不器用さの表れ方には大きな個人差があります。そのため、集めたデータをそのまま支援に当てはめるのではなく、一人ひとりに合わせて工夫する必要があります。さらに、同じ動作でも状況によって表れ方が変化するため、多様な場面での観察が必要です。
また、子ども自身が困りごとをうまく説明できない場合も多いため、周囲の大人からの情報も重要な手がかりになります。こうした複雑さに向き合いながら、よりよい支援方法を探っています。
最後に、三上先生からのメッセージ
日常を当たり前のものとして受け取るのではなく、「なぜだろう」と立ち止まって考える姿勢が大切です。すぐに答えが見つからない問いであっても、その疑問を持ち続けることで、新たな視点や発見へとつながっていきます。
不器用さの問題を抱える子どもたちにとっては、「上手にできるようになること」だけでなく、日常生活を支えることも非常に重要です。そのためには、一人ひとりに目を向け、多様な視点から考えていく必要があります。子どもたちの日常の中にある困りごとに向き合いながら、よりよい支援の形をともに考えていく。そのような研究に、ぜひ一緒に取り組んでみませんか。
陸奥新報社 2026年(令和8年)6月29日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部4年 佐々木 志乃
イラスト:教育学部4年 関川 智乃
担当 :弘前大学総務部総務企画課秘書室/広報・情報戦略課広報室
