- 森井悠太
- MORII YUTA
- [ 農学生命科学部 生物学科 准教授 ]
異なる特徴 理由を探る
今回は「捕食・被食関係に着目した生物多様性の創出と維持」についての研究です。
現在、地球上には数えきれないほどの生き物が存在していますが、元を辿ればそれらは全て地球に生まれたたったひとつの生命の子孫であるはずです。ではどのようにして、これほど多くの生き物に枝分かれし多様化したのでしょうか。ダーウィンが進化論を発表して以来、世界中で生物の起源や進化の仕組みをめぐる研究が行われてきました。しかし、生き物の多様化とその維持については不明な点が多く残されています。
弘前大学の森井悠太先生は「捕食―被食者間相互作用(食う食われる関係)」に注目し、カタツムリとその天敵であるオサムシを対象に、生き物の多様化を支える仕組みを明らかにしようとしています。
小さなカタツムリが語る“多様性”の物語
カタツムリといえば、のんびりと動く姿を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。その特徴こそ、森井先生が「生き物の多様化を探る研究」の対象としてカタツムリを選んだ理由のひとつです。動きが遅いということは、行動範囲が狭く、狭い環境の中で生活しているということになります。その結果、小さい範囲の中で多様化が進み、その過程を細かく追うことが出来ます。
森井先生は現在、主に北海道に生息するカタツムリについて研究しています。研究の始まりは、大学院時代、研究室でエゾマイマイという種類のカタツムリが、天敵に向かって殻を振る行動を偶然観察したことです。カタツムリはこれまで、天敵に出会うと殻に閉じこもると考えられており、この発見は大きな注目を浴びました。それ以来、エゾマイマイと、同じ地域に住むヒメマイマイという二種類のカタツムリについて研究を続けています。エゾマイマイは天敵に向かって殻を振りますが、ヒメマイマイは危険を感じると殻にこもり身を守ります。見た目や行動も異なる二種ですが、森井先生は大学院時代、二種のDNAを調べ、とても近い関係にあることを明らかにしました。
具体的に、カタツムリと天敵であるオサムシを同じケージに入れて観察したり、DNAを調べたりすることでどのように多様性が生まれたのかを分析しています。研究のため、北海道や時にはロシアまで足を運び、様々な種類のカタツムリを採集することもあります。同じ環境に生息し、遺伝的にもとても近い存在でありながら、ここまで違う特徴を持つようになったのはなぜなのか。その理由を探ることが、先生の研究のテーマとなっています。
研究におけるカタツムリ特有の課題
野外の環境では、気温、湿度など様々な要素が複雑に関わっており、条件をそろえて観察するのは簡単ではありません。そのため、野外で採集したカタツムリを研究室に持ち帰り、環境を整えて観察を行います。しかし、カタツムリは夜行性で刺激に敏感なため、わずかな光や音でも動かなくなり、観察においては、暗くて静かな環境を整え、根気よくデータを取る必要があります。さらに、カタツムリの寿命は2〜3年と長く、結果が出るまでに時間がかかります。このように手間と時間がかかる研究ですが、地道な観察の積み重ねやデータの記録が、生き物の多様化のしくみを理解する大切な一歩となっています。
最後に、森井先生からのメッセージ
様々な分野の学問や芸術に触れ、様々な良い経験をし、失敗を恐れず挑戦し、自身の世界を広げる努力をすると良いと思います。どんな苦境もポジティブに捉えられるような巨人・超人を目指して日々を全力で楽しんで、とにかく大きく成長してください。自身で決めた目標に手を抜かずに取り組むことが大切です!
陸奥新報社 2026年(令和8年)1月19日 掲載(PDF)
ライター:人文社会科学部3年 佐々木 志乃
イラスト:弘前大学大学院地域共創科学研究科 赤沼 しおり
担当 :弘前大学研究・イノベーション推進機構

