内容
財政悪化自治体に関する既存研究は、夕張市の財政再建団体への転落と財政健全化過程の事例検討が重ねられ、国のエネルギー政策の転換(石炭から石油へ)と観光の失策(リゾート開発の失敗)、さらに不適切な会計処理という視点から、財政悪化が説明されています。財政悪化やその健全化過程の全体像を検証するためには、第1に、財政悪化の要因をエネルギー政策の転換で説明できる地方自治体が一般的とはいえず、1980年代以降の民活路線の失策が深く関わる地方自治体が数多いとされます。その地方自治体が共通に直面してきた課題点を個別具体的に検証・統括することが求められます。第2に、財政健全化計画の完了の手続きについて注目されることは少なく、大鰐町のような財政健全化成功事例の検証は未着手です。第3に、既存研究の多くは、財政収支といった計数上の財政健全化の視点に比重がある点は否めません。行財政改革(財政健全化)の強力な推進は、地域住民生活を支えるナショナル・ミニマム確保のための地方財源保障の視点から捉え直す必要があります。