ジャスモン酸を構造基盤にした農薬(生長調節剤)開発

内容

ジャスモン酸は植物の傷害応答に関与する植物ホルモンですが、老化・肥大・節間伸長など多方面に影響を与えることが分かっています。しかし、「植物がこの物質をどのように認識しているのか」、「なぜこのようにマルチな生理機能を示すのか」などは完全には分かっていません。また、農薬としての可能性を考えた場合、このマルチな生理機能は副作用という短所にしかなりません。

ジャスモン酸は分子量200程度のコンパクトな構造中に4か所の立体化学が密集するため、20種を超える立体異性体のデザインが可能です。私はこのジャスモン酸の立体異性体ライブラリー(ジャスモン酸ライブラリー)を開発することで、上述の疑問・問題を解決する糸口が得られると期待しています。つまり、このライブラリーを活用すれば、たった一つの生理現象だけをピックアップして機能させる物質を開発することができます。これは植物の生理機能の仕組みの解明につながるだけではなく、完全に副作用を排除した新しい農薬(生長調節剤)開発への道を拓くことにもなります。