アレルギー性気道炎症疾患におけるGPERの治療標的分子の可能性

内容

喘息の羅患率や重症度には、以前より性差があることが知られており、特に成人女性で増悪、難治化の傾向にあります。女性の喘息の特徴として、妊娠・月経サイクル・更年期などに伴って症状が変化する事から、性ホルモン、特にエストロゲンの影響が想定されています。我々は、細胞膜上に存在するエストロゲン受容体GPERに注目して、その選択的アゴニスト(作動薬)であるG-1を用いた研究を実施しています。

喘息モデルマウスを用いた研究の結果、G-1投与群にて炎症細胞集積の抑制を確認しました(図)。左側のG-1非投与群(G-1(-))に炎症細胞が集積しているのに対して、右側のG-1投与群(G-1(+))では炎症細胞の集積が少なく抑制されている事が分かります。

GPERを介した炎症抑制においてはIL-10の関与が幾つか報告されており、その知見を活用してIL-10産生細胞を測定したところ、G-1投与群にてIL-10産生CD4+T細胞の増加を確認しました。また、IL-10ノックアウトマウスを用いて、G-1投与を行い気道炎症に対する効果を検討したところ、G-1投与群にてアレルギー性気道炎症は抑制されませんでした。

以上の結果により、GPERが喘息に代表されるアレルギー性気道炎症疾患の治療標的分子になる可能性を見いだす事ができました。また、女性に多く見られる難治性喘息の病態解明の糸口としても期待されます。