免疫抑制剤の肝星細胞に対する影響について

内容

 肝移植の発展はめざましく、先天性肝疾患、代謝性疾患、肝硬変、肝細胞癌、急性肝不全等に対する治療法として確立されました。我が国での初回生体肝移植から20年以上が経過し、長期生存症例が増加するなか、様々な晩期合併症が明らかになってきました。現在、移植肝のより良い長期生着のために、晩期合併症に対する取り組みが急務となっています。

 移植肝の線維化は、移植肝不全に至る重大な病態ですが、現時点でその機序ならびに対策は確立されていません。近年、活性化した肝星細胞が、コラーゲンやTGF-βを産生し、肝臓の線維化に関わることが報告され、移植肝においても同様の機序が働く可能性は無視できません。移植後に必要不可欠な免疫抑制剤により活性化星細胞が制御でき、移植肝の線維化予防および治療が確立できるならば、その臨床学的意義は極めて大きいと考え、まずは免疫抑制剤の肝星細胞に対する影響の解明を目指します。