肺静脈心筋細胞に存在する新規Cl⁻チャネルの遺伝子クローニング

内容

主な研究材料はラットの肺静脈の存在する心筋細胞であり、肺静脈心筋細胞は、最も頻度の高い不整脈である心房細動の発生起源として知られています。心房細動は、我が国では患者が約80万人いるとされ、高齢者において高い罹患率です。心房細動に伴うリズム異常は、心不全や心筋梗塞等の心疾患患者において予後を大きく左右するのみでなく、脳梗塞や認知症といった心外疾患を引き起こす原因ともなっており、高齢化が進む日本においては解決すべき喫緊の課題です。しかし心房細動が肺静脈から発生するメカニズムは十分に分かっておらず、抗不整脈薬による治療効率は20%と低いものです。近年、齧歯類の肺静脈から心筋細胞を単離する技術を独自に開発し、不整脈発生のメカニズムについて、肺静脈心筋におけるノルエピネフリン誘発自動能のメカニズム、肺静脈心筋細胞における新規Cl⁻電流など肺静脈における不整脈の分子基盤を明らかにしてきました。今回の研究課題である肺静脈心筋固有のCl⁻電流は、細胞膜の過分極によって活性化される内向き整流性電流であり、肺静脈における潜在性自動能を促進し、不整脈を持続させる機能を有していました。