X線CT分析による漆工文化に関する研究 −縄文時代と近・現代津軽塗りの比較を通して−

内容

 津軽塗りをはじめとする漆を利用した伝統工芸品は日本の文化的要素の代表であり、漆工品製作がはじまったのは縄文時代のはじめ頃までに遡ります。特に東北地方において縄文時代の終わりまで隆盛を誇ったようです。しかし、出土量のカウントや個体別に型式学的・素材同定・技法研究に留まり、一連の体系的な研究例は少なく、これは指標となる標準データが得にくいことによります。そこで、X線CT分析を応用し、三次元的な解析を可能とし、漆の重ね塗り構造の解析と合わせて、縄文時代の籃胎漆器や櫛の製作過程を明らかにしてきました。埋蔵文化財である縄文時代の櫛に対してX線CT分析からその内部構造を解析するのは、文化財科学分野では全く新しく、最先端の研究です。研究対象とした縄文時代の櫛は、発見されてから修復がされずに保管されたもので、実践的修復研究を完遂すれば価値ある成果となり、X線CT分析から得られるデータは、文化財分野において有用なデータとなります。