ハンナ・アレントと現象学運動――行為論的展開の探求

内容

 ハンナ・アレント『人間の条件』の現象学的行為論を考察しました。『人間の条件』では、彼女独自の「行為(action, Handeln)」概念が提示され、この概念が形成されたプロセスを探り、『人間の条件』における「行為」概念と「政治」概念の関係を明らかにすることが本研究の主要目的です。若きアレントがマールブルク大学の学生として出席していた、マルティン・ハイデガーの1924/25年冬学期講義『プラトン:ソフィスト』であり、アリストテレス『ニコマコス倫理学』の「フロネーシス」概念がハイデガー独自の視点から解釈され、『存在と時間』の現象学的行為論を準備するものとなっていました。アレントは、早熟の高弟としてハイデガーの講義に三学期にわたって出席し、また、この頃から彼との私的交流のなかで哲学対話を重ねていました。こうした哲学的理解にもとづき、彼女は『存在と時間』(1927年)に始まる彼の著作を読み解いています。