iPS細胞を用いた冠攣縮性狭心症病態解明へのアプローチ

内容

 冠攣縮性狭心症とは、一般的な狭心症のイメージである冠動脈のプラークが原因で発症するものとは異なり、冠動脈が攣縮する事で一定時間の間だけ血管が縮み、その間血流が流れない為胸の痛み等に現われる症状です。狭心症全体の割合においては40%程度が冠攣縮性狭心症といわれていますが、未だにその原因は究明できていません。
 血管の収縮は、平滑筋細胞の受容体に収縮物質が結合しホスホリパーゼC-βが活性化され、細胞内にカルシウムイオンが流入し濃度が上昇することで起こります。さらに流入したカルシウムイオンはホスホリパーゼC -δ1(PLC -δ1)を活性化し、更なるカルシウムイオン濃度上昇する情報伝達機構が解明されています。既に、冠攣縮性狭心症のPLC -δ1の遺伝子変異を発見し、機能解析したところ細胞内カルシウムイオン濃度上昇が亢進することを明らかにしました。
 今後は患者さんの皮膚線維芽細胞から、病態をそのまま反映する事ができるiPS細胞を樹立し、内皮細胞や平滑筋細胞に分化誘導させ、冠攣縮性狭心症の更なる原因究明に繋げて参ります。現在までに冠攣縮性患者由来iPS細胞の樹立・分化誘導に成功しているので、これから機能解析を実施する事で、病態の解明及び治療における新たな創薬ターゲットの創出が期待されます。