肝臓線維化及び肝細胞癌の予防法開発

内容

肝細胞癌は、肺、胃、大腸に次ぐ4番目に多い部位別の癌であり、年間約3万人が死亡しています。その原因の多くは、B型やC型といった肝炎ウイルスの感染等による慢性肝炎の発症から進行するものが多い事が知られています。慢性肝炎が肝臓の線維化が進行するといわゆる肝硬変となり、肝細胞癌の発癌リスクが増加する傾向にあります。

これまでの臨床的研究から、肝臓の線維化度合いを判断するマーカー物質として、ヒアルロン酸が有効である事が知られており、実際の臨床検査でも用いられています。我々は、一般的な考えとなっている「線維化に伴いヒアルロン酸が増加する」とは少し異なる「ヒアルロン酸の増加が原因となり線維化の進行、発癌率が増加する」という考えに基づき、ヒアルロン酸合成阻害剤を用いた予備実験を行い、その結果よりヒアルロン酸合成を制御することで線維化を抑制できる可能性があると考えています。線維化の進行が抑えられれば、最終的には肝発癌の抑制につながります。

現在、C型肝炎ウイルスを起因とした発癌抑制は薬剤が効果的に作用しています。しかし、近年増加傾向にある非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を起因とした発癌抑制に対しては対応が遅れています。本研究にてヒアルロン酸の肝線維化と肝発癌への関与が解明され、新規の抗線維化療法および肝発癌予防法の開発につながる事が期待されます。