実験・民具使用痕分析からみた先史植物資源利用の研究

内容

 使用痕分析法は過去の道具の機能・用途を解明するための重要な方法であるが、堅果類利用の民族例は日本以外では消滅しているため、植物利用の観点からの応用は世界的に例がありません。先史時代の主要なエネルギー源であるトチノミについて、加工技術の解明を目指します。トチノミ加工に伴う石製民具から、使用痕とデンプンを発見できました。実験の結果、使用痕は手ずれと軟物質の敲打によって生じ、その際、加工植物のデンプンが付着したと判断されました。本研究の結果、堅果類加工に特徴的な使用痕・付着物を特定でき、縄文遺跡では類似資料が多数発見されています。機能・用途解明のための糸口となるほか、先史時代の世界の同じ狩猟採集文化での比較応用が可能となり、「北日本の縄文文化の人類史上の普遍的価値」を見出す一助となることが期待されます。