硬く長寿命なダイヤモンドライクカーボン(DLC)の開発

内容

 ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜は、現在自動車部品などで実用化されている材料で、硬く、耐摩耗性に優れ、低摩擦である事が知られています。低摩擦である事から、潤滑油を使わない又は削減できるため、環境面においても優れた材料といえます。このようなDLC膜にシリコン(Si)を添加したSi-DLC膜も既に実用化されており、無添加のDLC膜と比較して剥がれにくい(密着性の高い)、耐熱性が高いなどの特性を持っています。
 我々は更に高機能なDLC膜の開発を目指して、Siに加えて窒素(N)を添加したSi-N-DLC膜の作製に成功しました。Si-N-DLC膜は、Si源に有機シラン、N源に窒素ガスを用いたプラズマCVD法にて作製する事ができます。両者は密着性、摩擦係数及び耐摩耗性の特性で互いの利点や欠点を補う関係にあります。我々のSi-N-DLC膜を評価した結果、従来技術であるSi-DLC膜と比較して、密着性、耐摩耗性及び耐熱性に優れており、摩擦係数が同程度であることが分かりました。また、安価な材料である窒素ガスを用いているため高機能化に伴う製造コストの問題もありません。
 上記特性は、自動車部品において燃費の改善や材料の長寿命化につながるため、自動車部品としての応用が大いに期待できます。