励起状態におけるプロトン移動反応及び水素原子移動反応の緻密な理論予測

内容

励起状態プロトン移動/水素移動反応は最も基本的な光化学反応のひとつであり、特に水素移動反応では、電子移動がプロトン(H)の移動を誘起します。量子化学計算によって、水素移動の反応機構を理論的に、かつ分子レベルでの解明を目指します。性質の異なる複数の励起状態のエネルギーを共に精度よく予測するために、 長距離補正TDDFT法による計算を行いました。その結果、下記のことが明らかとなり、今後の課題として取り組む予定です。アミノピリジン二量体: 芳香環間の電子移動が反応を誘起。遷移状態の分子構造を初めて理論的に決定。フェノール-三アンモニアクラスター: Rydberg軌道への電子移動が反応を誘起。アンモニアの配置が異なる二つの異性体。これら両者の水素移動反応が共存していることが考えられます。 フェノール-三アンモニアクラスターについて追加計算 → 異性体間の反応機構の違いDNA・RNAの断片分子(核酸塩基の多量体)への適用:光損傷・光安定性の機構解明