軟らかく折れにくい骨の開発

内容

 高齢に伴う骨組織の脆弱化や転倒リスクの増大を考えると、骨折による車椅子生活や寝たきりによるQOL低下は大きな社会問題といえます。近年の再生医療技術の進歩により、再生医療による骨組織の修復も将来的には大いに期待されます。しかしながら、骨の損傷や脆弱化を理由とした骨折リスクが高い状態の場合、早期での対応をすることによりQOL向上が期待できます。
 我々はそのリスクを軽減し、「折れにくい骨」の開発を目標として、骨組織の力学的機能を構成要素であるアパタイトとコラーゲンの構造・組成に基づいて評価した結果、アパタイト成分が多すぎる事により骨組織が脆弱化する事が分かりました。それゆえ、本来の骨の役割を果たす剛性を維持しながら、力が集中する局所的な部分のみを軟化させる応力解放法を検討しています。
 機械製品などには、応力の集中部に対して追加の加工を実施する事により、亀裂発生や伝播が抑制され破壊強度や疲労寿命向上に有効である事が分かっています。我々は、骨の応力集中部に対して局所的にアパタイト濃度を低下させた、軟らかく折れにくい骨(図1)を提案しており、今後臨床応用に向けた研究開発が期待されます。