分子標的治療薬を用いた悪性グリオーマ根絶治療

内容

脳腫瘍は、頭痛や嘔吐、半身麻痺や言語障害、視力障害などの症状を引き起こすため、適切な治療が必要です。脳腫瘍の中でも悪性グリオーマ疾患は、困難な外科的手術が求められ、手術後の予後不良も多い事から、悪性度の高い腫瘍では5年生存率が10%未満となっています。
予後不良の原因としては、腫瘍細胞の浸潤性の強さが原因となり、現在は腫瘍摘出後に放射線治療と化学療法を実施することで一定の効果を挙げています。本研究は、放射線治療の効率向上又は増感法として化学療法(分子標的治療薬)を用いた悪性腫瘍を根絶する事を目指しています。
これまでの研究成果にて、①細胞接着因子の一つであるN-カドヘリンがグリオーマ細胞に含まれること、②N-カドヘリンの発現が低下すると、腫瘍が浸潤性を獲得し髄液播種を引き起こすこと(Fig.1)、③分子標的治療薬として知られるEGFRチロシンキナーゼの作用にN-カドヘリンを増強させる作用があることを見出しました。更に、細胞外マトリックスの成分として知られるプロテオグリカンがグリオーマ細胞を吸着させる性質を用いて、残存腫瘍への分子標的治療薬局所投与及びプロテオグリカン塗布を用いた細胞吸着療法が有効な治療方法として期待できます。