認知症予防への先制医療へ向けて

内容

 認知症の予防に向けた先制医療に関しての基礎研究を行っています。病気になる前に介入するという考え方で、培養神経系細胞での遺伝子発現の調節を検討していくものです。
 脳血管障害(脳卒中)急性期の第一選択薬として広く用いられているエダラボン投与後の遺伝子発現変化の観察により、新しい脳保護制御について知見が得られました。フリーラジカル消去剤エダラボンは、培養ヒトアストロサイトおいて、脳浮腫の一因となる血管内皮増殖因子VEGFの過剰発現を中等度に抑制するとともに、神経細胞の生存・維持に欠かせない神経成長因子NGFの発現を増加させました。
 アルツハイマー病の主な原因とされる、脳内のアミロイドβ(Aβ)による神経毒性の抑制法を開発中です。ローズマリーなどのハーブ油に含まれる成分(カルノシン酸)は培養ヒトニューロブラストーマ細胞のAβ産生を抑制するとともに、Aβ処理による細胞障害で低下した細胞の生存率を改善することを見いだしました。その詳しいメカニズムの解明や、この方法の発展・応用を目指しています。また、既存薬の新たな有効性探索にも取り組んでおり、より高い脳保護効果をもたらす組み合わせの条件についても検討中です。