カルボニル還元酵素を用いた卵巣癌治療へのアプローチ

内容

卵巣癌は、切除手術や抗がん剤を用いて治療できますが、約70%が再発してしまう問題があります。再発した際には、癌性腹膜炎や最初の治療時の抗癌剤治療による抗癌剤耐性の問題も発生する為、治療がとても困難になります。
これまでの研究で、高脂血症に効果のあるクロフィブリン酸が、既存の卵巣癌抗癌剤と同等の効果がある事を見出すことができました。クロフィブリン酸の投与により、カルボニル還元酵素が誘導されて、生理活性物質プロスタグランジンE2が抑制されます。それによって、血管新生の減少や腫瘍細胞の細胞死が増加し、腫瘍の増大が抑制される事が分かりました。カルボニル還元酵素を強発現した細胞にて、コントロールと比較して腫瘍の退縮を確認しており、マクロファージ等の免疫細胞の影響を考察しています。
マクロファージから産生される腫瘍壊死因子(TNF)αの関与は大きく、これまで知られていなかったカルボニル還元酵素の腫瘍縮小効果機序を明らかにすることで、新たな卵巣癌治療への展開を期待する事ができます。