コンドロイチン硫酸プロテオグリカンによる血管新生制御

内容

 血管新生は、固形腫瘍、糖尿病性網膜症や緑内障や黄斑変性症を初めとする眼科疾患、炎症、慢性関節リュウマチ、尋常性乾癬、歯周病などの多くの疾患の発展や進展に関与しています。血管新生阻害剤の研究開発は、こうした疾患の予防や治療に有益となります。軟骨は、血管や神経を欠く組織です。軟骨に豊富なコンドロイチン硫酸プロテオグリカンは、神経軸索の伸長を阻害することがわかっています。しかしながら血管新生についてはよくわかっていません。そこで私は、プロテオグリカンが血管新生に影響するのかを検証しました。研究に使用できるプロテオグリカンの入手はこれまでは大変困難でしたが、近年、サケの鼻軟骨より抽出されたプロテオグリカン(PG)が市場で容易に入手できるようなりました。PGの血管新生の影響を血管内皮細胞の脈管形成アッセイで検証したところ、PGは、管様構造の形成を著しく阻害することが明らかとなりました。さらにこの阻害効果はPGに結合する糖鎖であるコンドロイチン硫酸によって発揮されていることを突き止めました。PGは血管内皮細胞増殖や遊走を促進する一方で、血管新生を阻害するユニークな機能を示しています。さらなるPGの創薬への可能性を模索するため、動物モデルでの検証と作用機序の解明を進めたいと思っています。