ヘム分解酵素HO-1の新規活性・機能の探索

内容

ヘム分解を担う酵素ヘムオキシゲナーゼ‐1(HO-1)は、活性酸素種(ROS)や重金属などに細胞が曝されると発現が誘導され、抗酸化活性および細胞保護作用を示す。細胞内ROS産生におけるHO-1の関与を検討するために、siRNAによりHO-1発現を抑制し、細胞内ROSをROS検出蛍光プローブCellROX Orangeを用いて染色した。その結果、HO-1発現抑制細胞では細胞内ROS産生が増強していた。また、HO-1の基質であるHemin処理によってROS産生増強が亢進した。一方、細胞内過酸化水素(H₂O₂)産生量は、HO-1発現抑制細胞とコントロールsiRNA細胞で差が見られないことから、HO-1発現抑制によりH₂O₂以外のROS産生が増強することがわかった。
ROSは複製老化を促進することが報告されている。そこで複製老化におけるHO-1の関与を検討するために、複製老化の指標となるSA-βGal染色を行った。その結果、コントロールsiRNA導入細胞では、Hemin処理によりSA-βGal陽性細胞が増加したが、HO-1発現抑制細胞では、コントロール細胞と比較して、SA-βGal陽性細胞が減少した。また、HO-1発現抑制細胞でもHemin処理によりSA-βGal陽性細胞が増加した。
以上の結果から、今回の検討ではHO-1発現抑制により細胞内ROS産生は増加するものの、SA-βGal陽性細胞が減少するため、HO-1の複製老化における関与は認められなかった。今後はHO-1過剰発現が複製老化を抑制するか否かを検討する必要がある。