冠攣縮性狭心症の疾患モデルマウスの開発と病態解明

内容

冠攣縮性狭心症(CSA)は日本人に多く、冠動脈の過剰収縮(冠攣縮)が原因です。その成因として、CSA患者では健常者と比較し収縮のkey enzyme であるPhospholipase C (PLC) 活性が亢進し、またその主なisoformはdelta-1 (PLC-delta 1)であることを私たちは見出しました。PLC活性亢進の原因としてPLC-delta 1の257番目のアミノ酸変異(R257H亜型)を発見し(上図)、機能解析ではR257H亜型のPLC活性は亢進し、結果として細胞内Caイオン濃度上昇が亢進することを見出しました。これら臨床例の解析結果をさらに掘り下げるために、変異型PLC-δ1(R257H)を血管平滑筋に過剰発現させたマウス(PLC-TG)を作成しました。臨床例と同様の血管収縮薬(エルゴノビン)を用いて検討したところ、PLC-TGでは冠攣縮を認めました(下図)。このマウスは臨床例に即した冠攣縮性狭心症動物モデルとして世界で初めての報告であり、今後の研究に極めて有用と考えられます。他にも、iPS技術を用いた最新の研究や、細胞内Ca動態に着目した冠攣縮の新たな病因に迫る独創的な研究も行っております。これらの知見は、冠攣縮の病態のみならず心臓突然死や急性心筋梗塞の病態研究にもつながり、臨床的に大きな意義を有すると考えられます。