放射線曝露およびc-Mp/作動薬投与マウス造血細胞における遺伝子発現変化の解析

内容

 高線量放射線曝露では造血組織等の再生能の高い組織への障害軽減が最優先課題です。致死線量を曝露したマウスに、国内承認医薬品の1つで血小板減少症治療薬であるromiplostim(RP)を投与することで、100%の救命効果が得られることを見出しました。更に放射線曝露ヒト造血幹/前駆細胞の網羅的遺伝子発現解析によって、がん遺伝子の1つであるMYC遺伝子とその下流の2種類の遺伝子発現が上昇していたことから、MYC遺伝子の造血幹/前駆細胞の放射線感受性への関与も示唆されました。RPが効果的な放射線防護剤と成り得るかどうか、造血細胞における遺伝子発現の観点から検討を行いました。7Gy曝露によりマウス骨髄細胞数は劇的に減少することが確認されました。MYC遺伝子の発現解析より、7Gy曝露5日後、RP非投与群では発現量の上昇が確認され、RP投与群では曝露後10日間に渡り発現上昇の抑制が確認されました。 RPが致死線量照射マウスを救命させた直接的な理由は不明ですが、Myc遺伝子が放射線感受性又は放射線曝露による生存率を知るための1つの指標と成り得ることが明らかとなりました。