小胞体ストレス応答に着目した放射線抵抗性マクロファージのアポトーシス制御の試み

内容

マクロファージは病原体感染などに対する生体防御においてのみならず、抗腫瘍免疫誘導においても重要な役割を果たします。一方で、近年の研究により、腫瘍領域に存在するある種のマクロファージが、がんの増殖・転移を促進するとともに、がん細胞の抗がん剤に対する抵抗性獲得に関与することが報告されています。従って、効果的ながん治療のためにはマクロファージの局所制御が重要となります。 放射線治療は局所制御に優れた有効ながん治療の一つですが、マクロファージなどの分化した細胞は放射線に抵抗性であることから、放射線単独での制御は困難であると考えられます。マクロファージに対するアポトーシス制御を探索する目的で、アポトーシス誘導および放射線増感作用を持つ小胞体ストレス応答に着目し、マクロファージの小胞体ストレス応答性を評価するとともに、小胞体ストレスによる放射線抵抗性の解除の可能性を検討しました。結果として、小胞体ストレスはマクロファージの放射線抵抗性を解除しませんでしたが、放射線抵抗性マクロファージにおいても小胞体介在性アポトーシス経路が機能することが明らかとなったため、小胞体を標的としたアポトーシス制御の可能性が期待されます。