全身麻酔機序の解明と各種薬剤の臨床薬理学的検討

内容

 当講座の研究は、周術期管理の観点から全身のほぼ全ての臓器が対象となります。その中でも、現在まで、内視鏡を用いた気道平滑筋緊張度に関する研究、グルコースの初期分布容量を用いた体液量の研究、経食道心エコーを用いた研究、全身麻酔機序に関する研究などが世界的に高い評価を得ています。
 現在特に力を入れている研究は、睡眠-覚醒回路から見た全身機序の解明です。主に、ラットを用いて、in vivoでは脳内の神経伝達物質の放出をマイクロダイアリーシスや脳組織標本を取り出して直接含有量を測定することで求め、さらに脳波解析および行動解析を行うことで機序解明に取り組んでいます。またin vitroでは、脳スライス標本や培養神経細胞を用いて、ノルアドレナリン(NA)放出や細胞内Ca濃度上昇に対する麻酔薬の作用を解析することでも検討しています。現在までの研究の結果、意識はどうもNA神経活動で見ると恐らく基礎値の80~250%の範囲では保たれるものの、その範囲外では保つのが難しいと思われます。また、NA神経活動を基礎値の250%程度までの増加では、増加に伴い覚醒が増強することも分かりました。最近は、覚醒レベル最大であるNA放出が250%までにしかならない生理活性物質オレキシン(OX)を中心に研究を進めています。臨床に於いても、血漿オレキシンA(OXA)濃度及びNA濃度を指標に、全身麻酔中のOX-NA神経活動の解析なども行っています。本研究は、学内では病態薬理学講座及び脳神経生理学講座、学外では筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構、イタリア・フェラーラ大学及び英国・レスター大学と共同で研究をしています。